ランスはプレイヤーを殺す。
今回はランスの話をします。
知ってますよね。ランス。槍じゃないです。アリスソフト制作のエッチなゲームの事です。はい。これ公式サイト。
で、ランスが凄いんですよ。ゲームとして、というのは置いておいて。物語が。設定が。
このたび発売された『ランスクエスト・マグナム』の中で、ある設定がようやく物語に干渉を始め、わくわくが臨界点を突破しまして。書かなきゃやってらんなくなりました。
ネタバレ全開でいきます。また、膨大な設定量に知識が追いつかず表現が曖昧になったりするかと思いますがすみませんはい。
ひとまず、ランスについて紹介。
ランスはアリスソフトから発売されたエッチなRPGゲームシリーズ。1989年に発売されたランス1からこれまで、数多くの作品が世に生まれています。
ランス1→ランス2→ランス3→ランス4→ランス4.1→ランス4.2→鬼畜王ランス→ランス5D→ランス6→戦国ランス→ランスクエスト(マグナムはパッチ2.0を指す)
↑こんな順番です。後述しますが、鬼畜王ランスはランス5ではない点に注意。
で、次に世界地図。以下の画像。
はい。
これで一目瞭然かと思うのですけど、ランスのぱねえ点その一。
設定が広く細かい。
ランスの生きる時代・LP期(LP期ってのは魔王であるリトルプリンセスの略。各時代の名称は魔王の頭文字を取って名付けられます)の数万年前、世界は創造神ルドラサウムの手によって暇つぶし目的に作られました。
さらには各神達によって、竜・人間・勇者システム・魔王システムなどが作られます。
LP期。世界地図でいう右側。人間の住む領域は三国に分かれています。それぞれヘルマン帝国・ゼス王国・リーザス王国。離れ大陸にJAPANなんてのもあります。
各国はお世辞にも仲が良いとは言えず、ヘルマンとリーザスなんかは一度戦争までしちゃってます。はい。
魔人。魔人は世界地図の左側に住んでます。
魔人は全部で大体20名程度いるのですが、こいつら、次期魔王の座をかけて戦争なんかしてまして。
そのためには人間を利用するは何やらとやりたい放題。ゼス王国は一回転覆しかけてます。
みたいな感じで、まーとにかく有象無象というか、阿鼻叫喚というか、くっちゃくっちゃに各勢力の思惑が蠢く世界なのですが、そこに我らがランス君が登場するわけですよ。
※余談として、これら膨大な設定・キャラクターを、ifの物語として『鬼畜王ランス』にてばばっと発表しています。
僕らプレイヤーはその前提を元に、「正史ではこいつらどうなんだろ-」と予想して楽しめるわけですね。
ランスシリーズの世界は、メタにゲームを描いた世界である。
ランス君の話の前に一つ書いておかねばなりません。
ランスシリーズは、前述した通り、ゲームです。そして、この世界はゲームのプレイボードです。
通常のゲームであれば、プレイボードのキャラクターは『ゲーム』を意識しません。ですが、この世界のキャラクターは『ゲームであること』を了解しており、自分たちのいる世界をプレイボードだと認識しているのです。
詳しく話しましょう。
この世界は、システムに支配されています。
神々によって作られた勇者システム、魔王システムが分かり易い例ですね。
※勇者とは、いつの時代も現れる解決仕事人を指します。世界の均衡を崩す何かが現れたら、それを成敗するよう作られたんですね。期限が切れると能力を失い代替わりしていきます。
魔王とは、世界に破壊と混沌をもたらす存在です。平穏な世界は神々の望むところではありませんので作られました。こちらも死亡すると代替わりします。
顕著なものでは、才能現界というシステムがあります。
生物には全て才能現界というレベル上限が設定されており、これを越えてレベルを上げる事はできない、という物です。
レベル。レベルです。RPG用語。レベル。
そう。このレベルの概念を、キャラクターは全て了解しているのですよ。
メタですね。めっためたです。
このメタファーは制作側もかなり積極的に行っていて、例えば、勇者システムを作った神の名前は『プランナー』といいます。
さらに、各時代の生物の大半を占める種族(LP期では人間)を『メインプレイヤー』と呼んでいます。
どんだけだよ。
ランスはバランスブレイカーである。
さて、じゃあランス君の話をしましょう。
ランス君は、世界のバグと呼ばれています。(AL教という、僕らの世界でいうキリスト教みたいな集団からは『バランスブレイカー』とも呼ばれています)
先程話した才能現界ですが、なんとランス君にはそれがないんですよ。
神々の作ったシステム漏れです。バグです。
なんで、ランス君は人間の身でありながら無茶苦茶やります。
各国の王女を犯し惚れさせます。魔人をばったばったと倒します。魔王と友達になります。
つまりですね、プレイヤーは、プレイボード上のバグ・ランス君を操作し、混沌にまみれた世界を叩き壊し、秩序のある世界すら叩き壊し、最後には再構築し、ひた進んでいくのです。
細かく設計されたプレイボードの破壊と再構築。
これがランスシリーズの(シナリオ面での)楽しみ方です。
僕ら VS ランス。
さて、そんなわけでランスは世界のバグなわけですが。
では、その世界を作ったのは誰なのでしょう。
当然、前述した通り、神々ですね。
では、神々とは?
――――ここで一つ、ランスクエストマグナムでのエピソードを挿入します。
ランスクエストマグナムでは、メインストーリーとして、AL教という宗教が描かれました。
このAL教。世界の人口の八割が教徒という凄まじい影響力を誇っています。
AL教で信じられている神の名は、ALICE。AL教法王はこの神のお告げを聞き、教徒へその言葉を届けているのです。
その内容は素晴らしく、人類を平和へと導く礎となるようなものです。
……表向きは。
はい。何事も大事なのは裏の顔。では、ALICEの裏の顔はなんなのでしょう。
神々は暇つぶしに世界を作りました。ALICEの目的も、全く同じ。世界で遊ぶこと。
ALICEと謁見する法王は、世界に上手い具合に争いが起こるよう人間のコントロールを命ぜられていたのです。
※鬼畜王ランスでも、似た設定は出されていましたが、今回、これが正史である事がわかりました。
さらには、争いを破壊し解決してしまうバグであるランスを疎んでもいると判明。
我らがI LOVE クルックー法王様の勇気で今回はランス君も死を免れました。それは良いか。
はい。重要なのは、ALICE。こいつです。
ランスシリーズはアリスソフト制作のゲームです。ALICE。とんでもねえのが現れました。
神々=制作者である事は前述しましたが、これはまんますぎやしませんか。
ALICEは世界というプレイボードで遊ぶため(=プレイヤーである僕らをゲームで楽しませるため)、世界に争いを起こそうというのですよ。
ランスは確かに世界のバグですが、だからといって、争いを起こす気はありません。解決する立場にあります。解決『してしまう』のです。だからバグと呼ばれるのです。
世界は争いで満たされていなければなりません。それを破壊してはならないのです。バランスが大事。そのバランスを壊すから、バランスブレイカー。
こうなってくると、もはやランスの究極の敵は明白。そう、ALICEです。
ランスはすでにリーザス、ゼス、JAPAN(正確にはその王女を)を手玉に取っています。さらには魔人を倒す剣・カオスも所持。
間違いなく人類最大の影響力を持つ男。本気でやる気を出して動けば、おそらく争いはなくなります。というかこの調子でいくと、次回には成り行きで残るヘルマンも手中に収めそうです。
※ちなみに現在のランス君の目的「シィル(相棒兼奴隷)の呪いを解く」「三国の王女を自分の女にする(残りヘルマン)」
そうなると、立ちはだかるのは神々、ALICEなのです。
もちろん、世界に争いがなくなれば、ゲームは成立しなくなります。ランスシリーズは終わり。僕らも世界を楽しめなくなります。
だから、これは、僕らVSランスの戦いなのです。僕らは、僕ら自身の操るランスと戦って、そして、ランスに勝利を捧げなければならないのです。
や、こんだけ書きましたけど、今後ALICEが物語にどう関わってくるかというのはわかりません。今回だけでもう登場しないなんて可能性もありますし。
しかし、ここまで来たらやっぱりALICE=ラスボスでしょう。
プレイヤーの葛藤が作品テーマとして掲げられる日も遠くはありません。
終わって欲しくないのに、終わって欲しい物語。
ランスは素晴らしいね!