ロバの耳☆

たまに書きたいことをだらだらと書く。

はがない9巻凄い。

 ※ネタバレ注意 

 

僕は友達が少ない9 (MF文庫J)

僕は友達が少ない9 (MF文庫J)

 

 タイトル通り、凄かったので、どう凄いのか書く。

  ネタバレしなくちゃ言いたいことは何一つ言えないのでがんがん飛ばしていきます。できれば既読の方だけお読み頂ければと思う。

 ひとまず、前巻までの簡単な流れ。

 

 1~6巻: 夜空が隣人部を設立し、友人のいない人間を集めて楽しく遊ぶ。

      その過程で、夜空・星奈・理科・幸村の4名が小鷹に好意を抱く。

      それぞれがそれとなくアプローチをかけるが小鷹はそれに気付かない。

 7巻:理科が『実は気付かない振りをしていただけ』の小鷹を鋭く見抜く。

 8巻: 星奈が隣人部全員の前で小鷹に告白する。

    小鷹、気付かない振りを続けようとするが、さすがに誤魔化せず逃走。

    理科、逃走した小鷹と大喧嘩。後、『本当の友達』に。

 Connect:小鷹と理科が『本当の友達』になったのを目撃した夜空、逃走。

 

 ざっくばらんに言えば、6巻までの日常をネタに、7巻から闘争を繰り広げるという構造になっている。本当に、これまでの馬鹿なノリが嘘のようにキャラクター同士がやりあってる。作品内で自作のアンチをやっているようにも思える。

 しかし、この変化も、当然といえば当然だった。というのも、「友達が欲しい」という共通した想いでまとまっているように見えて、その実、各キャラクターの願いがそれぞれ相容れないものだからだ。これが物凄く面白い。

 まず、小鷹。はがないの物語は、基本的に小鷹という男版サークルクラッシャーを中心に回っている。女だらけの隣人部でただ一人の男、小鷹。全員が小鷹に惚れている状況で、小鷹が特定の相手と付き合い始めたら、当然、隣人部というサークルはクラッシュする。そして、その決定打となりうるのが、星奈の告白だった。

 星奈は小鷹のことが好きで、まぁ、小鷹も星奈が好きだろう。けれど、両者の決定的な違いは、隣人部の馬鹿騒ぎを存続させるという目標を据えているかどうかだった。だから小鷹は「え?なんだって?」とアプローチを誤魔化し続けた。自分がサークルクラッシャーである事を理解しているから。だから、星奈の告白を受けるわけにはいかなかった。結果、逃走である。で、外部コミュニティの女の子といちゃつくわけでお前ホント(以下略)。だから理科もキレたという。

 次、理科。理科は友達が欲しかった。小鷹に好意を抱きはしたけれど、どうやら小鷹との交際よりも、友情を形作る方が理科には重要なようだ。だから小鷹を正し、そして、小鷹と本当の友達になることを誓い合った。

 星奈。前述した通り、星奈は隣人部の存続よりも小鷹との交際を優先している。というか、した。もしかしたら、星奈は自身の力量があれば、小鷹の交際と隣人部の存続を両立できると考えているのかもしれない。

 夜空。小鷹への独占欲が非常に強い。友情と愛情を同時に欲しているが、どうやら対象は小鷹のみ。愛情を星奈に奪われ、友情を理科に奪われたので、逃走。

 幸村。後述。

 ロリ組はおそらく明確な望みはないだろうが、アイラブマリア(マリアが一番かわいいよ!)に関しては、隣人部を奪われた場合、彼女の行く先はない。今後メインの話を作って欲しいです。

 

 という状態で9巻に突入したわけですよ。期待するに決まってる。そして期待以上だった。逃げ続けた小鷹がようやく動き出した。

 まず小鷹がどうしたか。小鷹の目標は隣人部存続である。だけど、星奈のことも好きだし付き合いたい。だから、土下座して星奈に頼み込んだ。「お前のことは好きだけど隣人部のために付き合うのは我慢する。お前も我慢してくれ」。そしてそれを受け入れる星奈。凄まじい清々しさだ。

 けれど、了承した星奈にとって、それは本意ではない。きっといつかは崩壊する。とりあえずの、一時しのぎのはずだ。しかし、他に方法がないのだから、小鷹はそうするしかなかった。

 で、夜空逃走問題に立ち向かうわけだが、これはすぐに解決した。夜空の逃走先が小鷹家だったので。しかし、夜空は以前の自信を全て無くし、卑屈化。以前の夜空を取り戻すこともできぬまま、物語は新展開を迎える。

 小鷹が逃走先に選んでいた生徒会メンバーと共に、隣人部が温泉旅行へ行くことになったのだ。二つのコミュニティが共に旅行へ行くにあたって、浮き彫りになったのが個々の人間関係の複雑さだ。小鳩は夜空と小鷹を慕い星奈を嫌う。星奈は小鳩と小鷹を愛し、マリアを疎う(かわいそう!)。理科は小鷹以外に友情を築けない。

 そして幸村は、小鷹を慕い、なんと生徒会メンバーと友情を築き上げた。隣人部の外へ、自らの意思で進出を始めたのだ。しかも、すでに隣人部よりも生徒会メンバーとの情の方が強い様子。明確に夜空を切り捨ててもいる。

 さらにもう一つ。生徒会の頂点、生徒会長と夜空が腹違いの姉妹関係にあることが明らかになった。おそらくは、これが夜空復活の鍵となるのだろうが、夜空はさらに沈み込んでいく。というところで、9巻が終わった。

 

 や、マジで面白い。

 これ何が凄いってお前、日常系ラノベにおける典型的なコミュニティを、キャラクターが自分たちでそれが尊く脆いものだと認識してるってところだよ。6巻までで散々馬鹿らしい、ともすればくだらない日常劇を繰り広げておいたというのがまた良い。取り戻すべき日常が小鷹と読者とで共有されてる。

 しかし、なんでもないように見えたコミュニティのどろどろした裏側を、8巻と9巻で嫌というほど見せつけられた。真実を明確に認識してしまった今、小鷹と理科は、以前と変わらぬコミュニティを果たして維持できるのだろうか。維持できたとして、現在のメンバーを全て繋ぎ止めることはできるのだろうか。つうか最近なんか理科がメインヒロインみたいになってきたよね。すげえ。

 いやはや、10巻が楽しみで仕方ない。

 みんな、はがない読もう!そして語り合おう!

 

 以上。ではまた。なんかの作品で心動かされたら書きます。

 とりあえず来週はパシフィックリム観る。