『おおかみこどもの雨と雪』観たらおジャ魔女だったので全力出す。
公開初日。本日、レイトショーで『おおかみこどもの雨と雪』観てきました。ので、感想書きます。あ、リンク先公式サイトのストーリー部分はまだあんまり見ない方が良いですよ。内容結構書かれちゃってますので。まぁ僕もこの後にがんがんネタバレ入れてく予定ですが。
はい。で、簡潔にまとめると。基本的に素晴らしく、オチでちょっとだけ消化不良。
まぁ一般ウケするかっていうと微妙ですが、語りたいことが山ほど出てくる映画ですので、よろしくお願いします。
(上映後に売店行ったらオフィシャルブック売ってくんなくて絶望した!)
では初めはできるだけネタバレしない感想から。
まずぶっちゃけですねー、広告見ても全然内容わかんないですよね、この映画。
正直、自分も「狼人間×2を育てる、子育てもの?」くらいの認識しか持ってませんでした。この映画のミソはそこじゃないっつうのに。
いっっちばん特徴的なのは、どう考えてもこれが『10年以上に渉る物語』だって事でしょう。アニメ的と言えばアニメ的。実写じゃなかなか難しい。これを違和感なく効果的にやれるのは、小説、そしてアニメくらいのもんじゃないですか。それをここでやる意味ね!
で、それがねー、すっげえ淡々と描かれるわけですよ。細田守というのはおジャ魔女やら時かけやらに代表されるように、カメラを遠くにおいて、キャラクターをこれでもかってくらいロングで撮るんですよね。この辺もホント、昔の細田守に戻ったかのようでしたよ。あくまでキャラクターを内から描かずに外から描いてます。観客はただただ彼らの人生を見守る存在でしかないって事ですね。だから、こいつはこういう奴だし、あいつはああいう奴、てな具合に、キャラクターがそれぞれ別個の事考えてる様子を、誰を優先的に見るでもなく、平等に知る事ができるわけです。これがむっちゃ良かった。
それとですね、理由の詳細については後述しますが、これはおジャ魔女ファンは確実に観るべき映画です。特にドッカーン親好家は観なきゃ首吊った方が良いレベル。&その頃の細田守がみられるので、細田守フリークももちろん観た方が良い。後者は言わずもがなですね。すみません。
内容については、まあ。感動します。心動かされます。ちょっとネタバレなしではこれくらいしか書けないので。そろそろネタバレオンして良いすか。良いすね。オンします。
※こっからネタバレオンで
視聴予定の人はウインドウ閉じた方が良いですよ、と前置き。
まず、説明をわかりやすくするため、登場人物の紹介を。
主人公、花。初回登場時、女子大生。声優は宮崎あおいオブマイラヴァー。
その夫、狼男。
二人の子供、姉の雪(幼年期の声優子役、ばりうま)。弟の雨。
大きくはこの四人ですね。この四人だけは覚えといてください。
はい。まずお話は、女子大生の花が大学に通う様子から始まります。語りはなんと、雪。花を「お母さん」と呼ぶ事により、観客は彼女が花の娘である雪だと知る事になります。前提知識が少しでもあればわかりますね。
で、ここで不思議に思うのが、なんで雪なんだ。つうところ。子供は二人いるっていう話だったじゃないか、弟どこいったんだよ、おい。という。ちっちゃい疑問作って観客に種を植え付けてきています。こわ。
閑話休題。
で、花は大学の講義で狼男の姿を見つけます。といっても、人間の姿形をしているわけですが、ともかく、どことなく雰囲気の違う彼に惹かれ、段々と二人は恋愛関係に発展、途中、自身が狼男だと明かされつつも、獣姦イベント(ひでえ表現だ)が発生、やがて花は二人の子供を出産します。最初は花へ正体を明かす事を恐れていた狼男が、いつの間にか花や子供のために狼の姿になって精力のつく獣を狩ってくるようにまでなっている姿は、小さな感動ポイントでした。しかしまぁ、そのせいで、狼男は命を落としてしまいます。詳細は伏せますが、というか伏せられていましたが、ここで突然の狼男の死となるのです。起承転結の、起の終わりです。
ネタバレなしんとこでも書きましたけど、ここまでのシーンがですねー、これでもかってくらい淡々と書かれるわけですよ。特徴的なのは、声がぜんっぜんねえの。ほぼBGMのみ。日常風景を演出の力ですげえ魅せる。これが……細田守……っ! まぁ冗談はさておき、ホントにすごいです。普通ならだれるポイントですよ。特に初めの方なんて取るに足らない恋愛話ですからね。さほど短くもないし。演出がああじゃなかったらやばかったっすね。
演出といえば、狼男が死ぬ雨のシーンは音響も相まって素晴らしかったです。これまではBGM満載だったってのに、突然、雨の音一色。花の叫びは雨でかき消されますし。声を出さなくても意味が伝わってたそれまでの日常風景と比べると、なんつう皮肉。その雨の音がばたりとやみ、花の脳内シーンに飛ぶ瞬間の凄みは、やはり映画館でないと味わえないでしょう。
花の孤軍奮闘が始まります。
知識も力もお金もない母親一人で、人間×狼である二人の子供を育て始めるのです。
夜泣きで近隣住民に叱られる。病気の子供をどこに(小児科?動物病院?)連れて行けば良いのかわからない。獣の姿で暴れられて部屋が滅茶苦茶になる。そのせいで大家にはペット禁止のはずだという苦言を呈される。悩み悩み、そして、花は、二人の子供を人間としてではなく、狼としてでもなく、ただただ彼らの望むとおりに育てたいと、田舎への引っ越しを決意します。この選択は生前の狼男との約束でもあるのですね。「宇宙飛行士でも、パン屋でも、子供たちの望む通りの職業に就かせてやりたいな」という。
この辺りからようやくBGMがなりを潜め、キャラクターが声を発し始めます。物語が始まったのだと認識できますね。まー、これが上手い。雪がぎゃあぎゃあと騒ぐのがすげえ効果的に写る。狼から人間へ、人間から狼へ、局所局所での変化が見た目にも音としても面白い。雪の声優、子役だってのにすげえ演技上手いし。たまらないですね。
はい。そして花はくそ田舎へ。学校へ通うのも、買い物をするのも車で数時間の廃屋。そこを改築してなんとか住居へと仕立て上げます。持ち金も少ない。なんとか自給自足の生活をしようと試みますが、失敗の連続、野菜は植えるたびに枯れ、段々と資金は底をついていきます。
が、それを助けたのが菅原文太。ツンデレおじいちゃん登場です。都会の人間嫌いの群れの中にいて、花へ罵倒するおじいちゃんが、花へ田舎生活のなんたるかを叩き込んでくれます。愛の叱咤。
段々と実り出す作物。じゃがいもを引っこ抜く花。そして雪と雨。初めはよそものの花から距離を置いていたご近所さん達も、段々と花に助けの手を差し伸べ出します。これにより花たち家族の生活は安定するに至ったのです。
まー、なんつうか、田舎出身者からすると、この辺りのくだりに覚える懐かしさは溜まりませんね。野菜水やりすぎると枯れるよね。じゃがいも引っこ抜くの楽しいよね。僕も中途半端な田舎ではありましたが、子供の頃に散々やりました。この辺りの印象、田舎を経験した事のない人はどう感じるんでしょう。ちょっと気になる部分ではあります。あぁ、それとは別に、ご近所さん達が仲間となる瞬間はマジで心動かされます。おぉ……おおぉ!?てなもんですね。予想されて然るべき展開ですが、それが感動を阻害する要因にはなりません。
はい。そして。そして! この後ですよ。この映画一番の盛り上げシーンが挿入されます。何てことの無いシーンではあるのですが、しかし演出がびっかびかに光りこれ以上ない名シーンに仕立て上げられているのです。
それまで淡々と描かれていたキャラクターへ、突然に色が灯ります。疾走感の強い演出で、雪と雨は野を賭け、花は笑顔でそれを追い、そして三人は揃って雪の中をぶっ転がる。アングルもぐりぐりと変化、カメラは移動しまくり。CGで雪が舞う。そうか、こいつらすげえ幸せなんだな、つうのが滅茶苦茶伝わってきます。ド直球。
ここで承終わり。公式サイト、ここまでストーリー欄に書いてあるんですけど。書きすぎじゃね?
すぐさま転へ。
雨が川へ転落します。雪の手でなんとか雨は助けられたのですが、雨には変化が。「なんか、僕でも狩りができるって、思ったんだ」。それまではずっとずっっと消極的なキャラクターとして描かれていた雨が、初めて自分の手で狩りを行った。そのせいで川へと落ちてしまったわけですが、しかし、雨も成長しているのです。
キャラクターの成長。雪は小学生となりました。幼稚園なんぞには通っていなかった二人ですが、狼である事を隠せる年齢にまで達し、ようやく人間社会へ溶け込む段階へと入ったのです。初めは不安がっていた雪でしたが、すぐに彼女は小学校を楽しめるように。翌年には、雨も小学校へと通い出します。
さて。ここで小さな疑問を思い出しましょう。どうしてこの映画には、おおかみこどもが二人いるのか。雪と雨。単純に子育てをテーマにするのなら一人で十分やないか、と、そういう話です。そしてもう一つ、思い出しましょう。起の冒頭、語りは雪だけのものでした。雨はどこに行ってしまったのでしょう。
雨は段々と小学校からドロップアウトしていきます。二人が小学校へ向かうようになって仕事を始めた花。それに付いていく雨は、職場で一匹のオオカミに出会います。そしてその目を見た雨。
雪はその頃、小学四年生に進学していました。彼女の元へ、一人の転校生が現れます。名前は草平。雪へ出会い頭放った言葉は「花、獣臭くね」。逃げる雪。追う草平。追い詰められた雪は、花との約束を破り狼と化し草平に怪我を負わせてしまいます。おっとぉ……。
――――が、しかし、草平はできる子。雪を庇った彼は、家にひきこもってしまった彼女を学校へと連れ戻します。雪は一層、学校を愛するように。
そして、雨は小学校へ行かず、何故か山の中へと去って行く日々。花が話を訊いてみると、彼は野生の狼の元で、狩りの方法や山の歩き方、調和を学んでいたのです。もうここまで来ればオチはわかりますね。なんという事だ。
なんつうかねー、基本的に10年以上もの時間を、後戻りすることなく淡々と進んでいく物語なのですが、しかし、雪や雨の成長というのはですね、狼人間としての成長なわけですよね。それが人間側へ行くのか狼側へ行くのかは置いておいて。
それというのは、やはり狼男である父親を想起させる物語なのではないでしょうか。花は彼に出会った時、「必死で生きてきた」とだけ聞かされました。裏返る事のないストーリー、幼少時代の彼を知る事は叶いません。
だからこそ、雪と雨の物語が生きるのでしょう。これは追体験ですよ。狼男である彼は、雪や雨と同じように生きたのです。こういう方法で過去を魅せるというのは、本当に面白いし感動できる。ふおぉおおおおっ! ってなります。
転。終わり。
結。
もうおわかりかと思いますが、つまりこの映画は、選択の物語なのです。おジャ魔女ですよ。「どれみと魔女をやめた魔女」ですよ。そして「ずっとずっと、フレンズ」ですよ。生きるというのは選択の連続なんですよ。
花たちの暮らす村へ、嵐が訪れます。いつもと変わらず学校へ向かった雪。家へ残り花と共に嵐から家屋を守る雨。対照的な二人。やがて起こる停電に、雨は山へと向かいます。雪の学校は下校命令が出ており、生徒達は家族の迎えを体育館で待つように。しかし花は、消えた雨の捜索に、自身も山の中へと入っていきます。雨はどこへ消えたのか。ずたぼろになっていく花。
場面は小学校へ。雪は草平と共にぽつんと夜の学校に残されます。そこでぽつぽつと語り出す二人、そして、雪は草平から、彼女が狼だと気付いていたのだと、聞かされます。雪は、そうして人間の中に生きる許しを得たのです。であれば彼女は人間として生きる他ありえません。承認というのは素晴らしいアイテムですよね。涙を流す雪にほろりときますよホント。たまらん。
戻り場面は山の中。花は崖から転落。意識を失い、夢の中、死した狼男と出会います。「ありがとう、もう子供達は大丈夫だ。大人になった」そういう彼。目覚めた花の目前には、遠くへ消えて行く雨の姿がありました。雨が彼女を助け、人里へ戻したのです。ですが、瞬時に雨は狼の姿へ。花の呼びかけ空しく、だだっと山の中へと去って行きます。花を否定し山へ入る彼は、確かに成長したのでしょう。母親と決別し狼となる覚悟をしたのですよ。それが彼の狼としての存在理由であり義務なのです。彼は花への感謝の印と、自身の成長の証として、山の頂上で、高らかに雄叫びをあげます。そして花は笑顔で力強く「しっかり生きて!」。
で、エピローグ。
子供が大人になり、子育てが終わったので、エピローグです。雪が小学校を卒業、中学校の寮へ入り。一人になった花。まるでおとぎ話のような、10数年の終わり。拍手。
選択の物語というのは、どうしてこうも胸を捕らえ放さないのでしょう。もうこれは僕がおジャ魔女によって行われた英才教育の虜になっているとしか思えませんね。花の家を出て、左方向が雪の通う小学校、右方向が雨の通う山の中。分裂する二人の人生が演出に現れているのはいつもの細田守すぎて胸がきゅんきゅんします。「魔女をやめた魔女」にてどれみが、みんなの帰る左方向の道を離れ、(元)魔女であるみらいさんの住まう右方向の道を選択していた事を思い出しますね。この映画、「カムバック!おジャ魔女どれみ!」とかって広告出した方が良いんじゃなかろうか。
いや、なんつうかですね、ぶっちゃけストーリーは盛り上がりに欠けるんですよね。大して突飛なドラマがあるわけでもなし。だからぶっちゃけあんまり興行的には成功しないように思います。言ってる事も『選択』とかって面倒なこと言ってますからね。でもですね、ほんと今回は演出勝ちですよ。いつももそりゃ素晴らしいですが、今回はマジで生かされていた。ぽつんと配置したキャラクターを孤独に魅せたり、ズームアップで幸福を演出したり、顔を隠して距離感を示したり、二人を画面の端と端に置いて価値観の相違を表したり。全て並べ立てていったらキリがないですね。それ程までに素晴らしかった。小学校にて、雨が一年生→三年生へと進学していく辺りの演出は上手すぎてなんも言えない。あれは言葉では説明出来ませんね。みんな観るべき。
まぁしかし、ネガティブな意見も述べておきますと、選択の物語だというのはそうなんですが、花視点ではそうでもないんですよね。子育ての物語。子育てを開始して、卒業する物語です。初めの辺りは恋愛パートも挿入されたりしつつ、ちょっと詰め込みすぎというか、もうちょいテーマをまとめれば良いのに、とは思いました。
それとですね、やっぱあれですね。最後ちょっとあっけなさすぎでしょう。雨が雄叫び上げて雪が中学校に進学するって言われて終わりですよ。もうちょい、具体的には雨が消えた直後の雪のコメントくらいはあっても良かったんじゃないかと思います。尻すぼみ気味。
それ以外は特に不満なし。良い映画でした。
まぁサマーウォーズ越えとはいきませんが、しかし、絶対的に面白い。BDは買います。
素晴らしいので皆さんも是非。
そして感想をブログに。むっちゃ語りたいです。
おみやげみっつ、たこみっつ!!
蛇足
上のオチで満足した人は読まないで下さい。
気持ちの悪い蛇足に入ります。僕の性癖の話です。
あのですねー、僕はストライクゾーンが広範囲な人間なので小学六年生なんていうのは余裕で圏内なのですね。おジャ魔女然りね。ていうかクライマックスでの雪の年齢がどれみ達の年齢と同じというのがね、興奮しますよね。いや、物語的な意味で。
それはそうと雪ね、可愛すぎるね! やばいね! 雪とちゅっちゅしたくてたまらん。結婚して欲しい。なんつうか、おっぱい膨らみかけに対して発生する情欲はすごいですよね。あのウェーブがかった髪型もエロティックでイイネ! ていうかおいおいおいおい俺は変態か変態ですねすいません……。
あ、それとですねー、宮崎あおいが人妻役ってのも良いですよね。宮崎あおい本人も一時期は人妻属性付いてましたけどもう消えましたからね。ていうか相手が高岡はちょっとね。乳首権も発行されてちょいびびり。全然エロくなかったけど。……あ、乳首権といえば幼少期の雨と雪はモロだったけど大丈夫なんだろうか(病気)
まぁなんつうかつまるところ雪をくださいという話です。
あとは雨と雪がケモナーさん達の犠牲にならない事を祈るばかり。
はい。長かったですが、以上です。
もし読んでくださった方いるのなら、読了感謝です。あざっす!!
ではまた来週!
※一緒に観に行った友人もブログ書いてたので貼っときます。
http://d.hatena.ne.jp/Dobjectdesign/20120721
http://d.hatena.ne.jp/Dobjectdesign/20120722
軽くコメントしておくと、選択の内容如何より、「選択をするに至った」という事実が重要なんじゃないですかね、成長という観点からして。それを否定するっつう言い分も理解できるけど。選択が与えられたもんだってのには、確かに制作者から与えられたものだと思います!観る側にとってすげえ分かり易く心動かされる選択だし。雨と雪はエンターテインメイントの生け贄にされたのだ!